経営者のための“原価の見える化”実践ガイド

はじめに：FLが見えない。それだけで利益は逃げていく。

飲食チェーンにとって、FLコスト（Food & Labor）は、経営における最重要指標のひとつです。
売上の50〜60％を占めるこの数値が、日々どれだけ正確に“見えているかが、最終的な利益や意思決定スピードに直結します。
しかし現場ではいまだに、「FLが出るのは月末」「正確な原価が分からない」「人件費が多いか少ないかの判断が感覚頼り」といった声が多く聞かれます。
本記事では、その“見えない”課題がどれほど経営を曇らせているかを明らかにし、リアルタイムでFLを可視化する仕組みと実践手法をご紹介します。勤怠・発注が別々のシステムで管理されており、手間がかかっています。

FLコストが“見えない”と何が起きるのか

「売上は悪くないはずなのに、なぜか利益が残らない」。
これは、FLコストが日々見えていない店舗にありがちな状況です。

FLコストとは、食材費（F）と人件費（L）を合算したコストのこと。飲食経営ではこの2つの管理が最も重要で、これを適正に保つことで粗利益が守られます。

ところが、実際には次のような問題が発生しています：

• ■仕入れ食材の廃棄が発生しても、気づくのは週末や月末
• ■人件費が膨らんでいても、集計が遅れ現場に伝わらない
• ■赤字の兆候を見逃し、打ち手が後手になる

要するに、“FLが見えない”ことは、収益の悪化に気づけず、経営判断が常に遅れるという重大なリスクを抱えているのです。

FLが「見えない」3つの原因

FLコストが可視化されていない企業には、共通の課題があります。それはシンプルに言えば、「データがバラバラ」ということ。

以下に、特に多く見られる3つの要因を挙げます。

① 売上・仕入・勤怠が異なるシステムで管理されている
POS、勤怠管理、受発注。 これらがそれぞれ別のサービスやベンダーで稼働していると、FLを算出するためのデータ統合が非常に困難です。

② Excelによる手作業集計に依存している
現場や本部スタッフが、各システムからデータを抽出してExcelで貼り付け・加工を行っている場合、手間・ミス・属人化の三重苦になります。

③ 入力漏れ・誤入力で原価が正確に把握できない
「納品書を手入力」「棚卸データが遅れる」「勤怠データが確定していない」など、不完全な情報での計算が常態化し、意思決定の精度が下がります。

「FLが毎日見える」仕組みが利益体質を変える

ではどうすれば、日次でFLコストを見える化できるのでしょうか？
答えは明確です。売上・仕入・勤怠の一元化と自動連携によって、リアルタイムでFLを算出する仕組みを持つことです。

☑ 売上：POS連携でメニューごとの構成比、原価率を自動取得

☑ 仕入：納品・棚卸・廃棄データがシステム内で連動

☑ 勤怠：シフト・実績・時給情報が労務システムから取り込まれる

このように、“毎日見える”ということが、現場と本部の判断を変え、結果として利益構造を強化する武器になります。

「FLが毎日見える」仕組みが利益体質を変える

FLコストの把握は、現場任せであってはなりません。
本部が数字をリアルタイムで掴み、全社的なマネジメントを行う仕組みこそ、これからのチェーン経営に不可欠な基盤です。

データで店舗を評価し、行動変容を促し、改善を可視化する──それができて初めて、組織は「属人的な経営」から脱却します。

すでに業界では、人の勘に頼る運営から、数字で動く組織づくりへとシフトが進んでいます。

FLコストが“見える経営”は、企業の競争力そのものになる

人手不足、原価高騰、変化する消費行動——。
これからの外食業界では、毎日の数字を読み解ける組織だけが、生き残っていきます。

FLコストの見える化は、単なる改善活動ではありません。
それは、「利益を守る」「経営を動かす」「未来を描く」ための確かな武器です。

今、経営の根幹に取り組むタイミングです。