2026年8月4日

多店舗のFLコスト管理とは?飲食店チェーンで数字がずれる原因と改善方法

FLコストとは、飲食店の食材費を表すFood Costと、人件費を表すLabor Costを合計した金額です。

ただし、FLコストは計算式を知るだけでは正しく管理できません。食材費や人件費に何を含めるか、どの時点のデータを使うか、ヘルプ勤務や本部費をどの店舗へ配賦するかによって、数値は変わります。

特に多店舗展開では、店舗ごとに集計ルールや締め時点が異なると、店舗比較や経営判断が難しくなります。本記事では、多店舗チェーンを前提に、店舗別FLコストの集計範囲、管理単位、日次管理、店舗比較のポイントを解説します。

飲食店の経営会議で「今月のFLコストはいくらか」と聞いたとき、店舗、本部、経理で異なる数字が出てくることがあります。

原因は、計算そのものが難しいからではありません。仕入額を納品基準で見るのか、棚卸後の原価で見るのか、人件費に交通費や法定福利費を含めるのかなど、
数字を作る前提が部署や店舗ごとに異なっていることが主な原因です。

FLコストを多店舗経営の判断材料として使うには、金額を集計するだけでなく、費用の定義、締め時点、店舗への配賦方法、データの更新ルールまでそろえる必要があります。

多店舗でFLコストを管理する意味とは

多店舗飲食店における食材費と人件費からなるFLコストの構成図

Food CostとLabor Costの合計額

FLコストは、飲食店の運営で発生する主要なコストをまとめて把握するための数字です。

  • F:Food Cost。食材、飲料、原材料など、商品の提供に必要な費用
  • L:Labor Cost。店舗運営に必要な給与、時給、手当などの人件費

基本的な考え方は、次のとおりです。

FLコストの基本式

FLコスト=食材費+人件費

FLコストは、食材費と人件費の合計額を表す指標です。例えば、食材費が150万円、人件費が140万円であれば、FLコストは290万円です。実績だけでなく、予算や速報値として管理する場合もあります。

なお、売上に対するFLコストの割合である「FL比率」は、店舗規模が異なる店舗同士を比較する際に重要な指標です。詳しくは
FL比率とは?飲食店の計算方法・適正値を解説
をご覧ください。

利益が残る前の大きな支出を把握する

店舗の売上からFLコストを差し引いた残額が、そのまま利益になるわけではありません。ここから家賃、水道光熱費、販売促進費、決済手数料、消耗品費などを支払う必要があります。

つまりFLコストは、最終利益を直接示す数字ではなく、
店舗運営で大きな比重を占める食材費と人件費が、どの程度発生しているかを把握するための基礎データです。

店舗全体の利益を把握するには、FLコストだけでなく家賃や水道光熱費なども含めた収支管理が重要です。

詳しくは飲食店の収支管理とは?をご覧ください。

区分 主な内容 確認できること
Fコスト 食材、飲料、原材料など 商品提供にかかる費用の大きさ
Lコスト 給与、時給、各種手当など 店舗運営にかかる労務費の大きさ
FLコスト FコストとLコストの合計 主要コスト全体の発生額
その他経費 家賃、水道光熱費、販促費など FL以外の店舗運営コスト

多店舗の店舗比較ではFLコストとFL比率を使い分ける

FLコストは金額、FL比率は売上に対する割合

FLコストとFL比率は混同されやすい言葉ですが、確認する目的が異なります。

指標 表すもの 向いている確認
FLコスト 食材費と人件費の合計金額 支出額、予算残、資金の動き
FL比率 売上高に占めるFLコストの割合 店舗規模が異なる店舗の比較

例えば、大型店は小型店よりFLコストの金額が大きくなりやすいため、金額だけで店舗の良し悪しを判断することはできません。一方で、支払い予定や予算残を確認するときは、割合だけではなく金額の把握が必要です。

多店舗の比較では、FL比率だけでなく、客数、客単価、営業時間、労働時間、予算差なども併せて確認すると、店舗ごとの改善点を見つけやすくなります。

経営・本部・店舗で見る数字を分ける

FLコスト管理では、役割によって必要な見方が変わります。

  • 経営層:全社のFLコスト、予算、利益見込みを確認する
  • 本部担当者:店舗別の前年差、予算差、集計状況を確認する
  • エリアマネージャー:担当店舗の変化や異常値を確認する
  • 店長:当日の仕入、人員配置、労働時間を確認する

全員に同じ帳票を配るより、役割ごとに必要な粒度で数字を表示した方が、確認後の行動につなげやすくなります。

多店舗で比較できるFLコストにするための定義統一

多店舗のFLコスト管理で統一すべき食材費と人件費の内訳

食材費は仕入額と原価で意味が異なる

Fコストを集計するときは、「食材費」という言葉が何を指すのかを明確にする必要があります。

集計方法 内容 特徴
仕入額 期間中に納品・購入した金額 速報性が高いが、在庫増減の影響を受ける
実原価 期首在庫+仕入-期末在庫 期間中に消費した原価に近いが、棚卸が必要
理論原価 レシピ原価と販売数量から算出 標準使用量との比較に向いている

月中の速報では仕入額、月末の確定では棚卸を反映した実原価を使うなど、確認するタイミングによって使い分ける方法があります。

人件費に含める項目を決める

Lコストも、給与だけを集計する場合と、関連費用まで含める場合では金額が異なります。

  • 基本給、時給
  • 残業手当、深夜手当、休日手当
  • 役職手当、店舗手当
  • 交通費
  • 賞与の月割額
  • 社会保険料などの法定福利費
  • 派遣スタッフや業務委託スタッフの費用

店舗運営の速報値では、労働時間と時給をもとにした概算人件費を使い、月次の損益管理では法定福利費などを含めた総人件費を使うこともあります。

人件費を適正化するためには、削減だけではなく生産性の向上も重要です。人時売上の考え方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

重要なのは、どの項目を含めるかよりも、同じ目的の帳票で同じ定義を使い続けることです。

店舗ごと、月ごと、担当者ごとに集計範囲が変わると、数字を正しく比較できなくなります。

店舗に直接ひもづかない費用を分ける

本部社員の給与、研修期間中の人件費、セントラルキッチンの費用などは、特定の店舗へ直接ひもづけにくい費用です。

これらを店舗別FLコストに含める場合は、売上、労働時間、店舗数など、どの基準で配賦するかを決める必要があります。配賦前の店舗直接費と、配賦後の管理会計上の費用を分けて表示すると、現場の責任範囲が明確になります。

多店舗では予定・速報・確定を分けて管理する

多店舗で予定・速報・確定のFLコストを管理する3段階フロー図

予定FLコスト

予定FLコストは、営業前または月初時点で見込まれる食材費と人件費です。

  • 売上予算や売上予測
  • 発注予定額
  • 予定シフト
  • 予定労働時間
  • スタッフごとの時給

予定値を持つことで、営業後に「結果が良かったか」だけでなく、「計画に対してどこで差が生じたか」を確認できます。

速報FLコスト

速報FLコストは、営業中または営業終了後に確認する暫定値です。POS売上、納品データ、打刻実績など、早く取得できるデータを使います。

棚卸や給与計算が完了していないため確定値ではありませんが、当月中の判断に利用できます。

確定FLコスト

確定FLコストは、棚卸、請求書、勤怠締め、給与計算などを反映した後の数字です。月次損益や会計処理に使うため、速報値よりも正確性が重視されます。

段階 主なデータ 主な用途
予定 予算、発注予定、予定シフト 営業計画、予算管理
速報 POS売上、納品、打刻実績 営業中・月中の判断
確定 棚卸、請求、勤怠締め、給与 月次損益、会計処理

予定値、速報値、確定値を混在させると、「昨日見た数字と月末の数字が違う」という混乱が起こります。それぞれの数字がどの段階なのかを明示することが大切です。

多店舗では日次の速報値で異常を早期発見する

多店舗チェーンでは、月末の確定値だけを確認していると、原価率の悪化や人員配置の過不足に気づくまで時間がかかります。

POS売上、納品、打刻実績などを使った日次の速報値を確認できれば、本部やエリアマネージャーは異常のある店舗を優先的に確認できます。

日次管理の目的は、速報値を会計上の確定値として扱うことではありません。月中に傾向を把握し、発注量、シフト、人員配置などを早めに見直すことです。

日々の数値を改善につなげるには、FLコストだけでなくKPIを継続的に管理することも重要です。詳しくは飲食店KPIの設定方法をご覧ください。

多店舗管理で店舗別FLコストがずれる原因

店舗コードや営業日の基準がそろっていない

POS、勤怠、仕入の各システムで店舗名や店舗コードが異なると、同じ店舗のデータを正しく突合できません。

また、深夜営業店では、午前0時以降の売上や勤務時間をどの営業日に計上するかによっても数字が変わります。

ヘルプ勤務の人件費が所属店舗に残っている

他店舗へ応援に入った従業員の人件費が所属店舗に計上されたままだと、実際に人員を使用した店舗のLコストが過少になります。

店舗別の実態を確認するには、勤務実績に応じてヘルプ先へ人件費を配賦する必要があります。

納品日と使用日が一致していない

大量仕入を行った日はFコストが大きく見え、在庫を使用した日は小さく見えることがあります。仕入額だけで日別の状態を判断する場合は、納品タイミングによる変動を考慮しなければなりません。

修正データが反映されるタイミングが異なる

売上修正、返品、値引き、打刻修正、請求訂正などが後日反映されると、過去のFLコストも変わります。

数字の更新日時や締め状況を確認できない運用では、担当者が異なる時点のデータを比較してしまうことがあります。

店舗数が増えるほどExcel集計が複雑になる

店舗数が増えると、売上、勤怠、仕入、棚卸などのデータをExcelへ転記し、本部で統合する作業量も増加します。

店舗ごとにファイル形式や入力ルールが異なると、集計の遅れや転記ミスが起こりやすくなります。多店舗展開では、各店舗が同じ入力項目と締めルールを使い、本部が店舗別・エリア別・業態別に比較できる状態を整えることが重要です。

Excelによる管理に限界を感じている場合は、POSや勤怠データを連携できる飲食店向け売上管理システムについても参考にしてください。

業態や店舗規模の違いを考慮せず比較している

駅前店、郊外店、フードコート店などでは、客数、営業時間、商品構成、人員配置が異なります。FLコストの金額だけで良し悪しを判断すると、大型店ほど不利に見える場合があります。

店舗比較では、FL比率に加えて、客数、客単価、労働時間、時間帯別売上、予算差なども確認し、同じ業態や条件の店舗同士で比較することが大切です。

多店舗管理で確認したい共通ルール

  • 店舗コードと店舗名称
  • 営業日の区切り
  • 売上の集計基準
  • 食材費の計上日
  • 人件費の集計範囲
  • ヘルプ勤務の配賦先
  • 速報値と確定値の更新タイミング
  • 業態や店舗規模ごとの比較条件

多店舗チェーンでFLコスト管理を定着させる手順

  1. 管理目的を決める

    日々の店舗運営に使うのか、月次損益に使うのかによって、必要な精度と更新頻度が変わります。
  2. 費用項目の定義表を作る
    FコストとLコストに含める項目、含めない項目を一覧化します。
  3. 管理単位を決める
    全社、業態、エリア、店舗、日別、月別など、どの単位で確認するかを決めます。
  4. データの取得元を整理する
    POS、勤怠、発注、仕入、棚卸、給与、会計のどこから数字を取得するかを明確にします。
  5. 店舗コードと営業日を統一する
    システムごとに異なる店舗名称や営業日の区切りを整理し、同じ店舗のデータを正しく突合できる状態にします。
  6. 予定・速報・確定を分ける
    数字の段階を明示し、異なる時点のデータを混ぜないようにします。
  7. 更新と確認の担当者を決める
    店舗、本部、エリアマネージャーのうち、誰がデータを確認し、差異が出たときに誰が修正するのかを決めます。

FLコスト管理は、帳票を一つ作って終わる取り組みではありません。店舗の開閉店、業態変更、給与体系の変更、仕入先の変更などに合わせて、定義や連携方法を見直す必要があります。

まかせてネットで多店舗の管理データを一元化

まかせてネットで多店舗の売上・勤怠・仕入データを一元管理するイメージ

FLコストを管理するためには、売上、勤怠、仕入といった複数のデータが必要です。これらが別々のシステムやExcelに分かれていると、店舗コードや日付を合わせる転記作業が発生します。

「まかせてネット」は、POSレジなどから取得した売上データ、打刻やシフトを含む勤怠データ、発注・仕入・棚卸などのデータを一元的に管理できる、多店舗展開企業向けの店舗管理システムです。

売上・勤怠・仕入データをつなげる

各システムのデータをまとめて管理することで、本部担当者が複数の帳票や店舗別Excelを見ながらFLコストを手作業で集計する負担を減らせます。

同じ店舗コードと営業日基準でデータをつなぐことで、店舗別・日別・月別の比較もしやすくなります。

  • POSレジや券売機の売上データを取り込む
  • 打刻実績から労働時間や人件費を集計する
  • ヘルプ勤務の人件費を勤務店舗ごとに集計する
  • 発注、仕入、棚卸、廃棄の情報を管理する
  • 理論原価、実原価、在庫を確認する
  • 店舗別、日別、月別に必要なデータを確認する
  • 予算、速報、確定の数値を用途に合わせて管理する

既存システムを活かした連携にも対応

FLコスト管理を始めるために、現在利用しているPOSや給与計算ソフトなどをすべて入れ替える必要はありません。

まかせてネットは、POSレジ、券売機、予約管理、発注システム、給与計算ソフト、会計ソフトなどとの外部連携に対応しています。既存の運用を活かしながら、必要なデータを段階的に一元化できます。

企業ごとの管理ルールに合わせる

FLコストの定義や帳票の見方は、企業や業態によって異なります。まかせてネットでは、企業ごとの運用方針やKPIに合わせたカスタマイズにも対応しています。

まかせてネットのFLコスト管理機能について詳しく知りたい方は、FLコスト管理機能ページもあわせてご覧ください。

店舗には日々の売上・仕入・人件費、本部には店舗比較や締め状況、エリアマネージャーには担当店舗の異常値、経営層には予算や損益の状況など、役割に応じた見せ方を検討できます。

多店舗のFLコスト集計ルールを整理しませんか?

売上・勤怠・仕入データのつなぎ方や、店舗別・日別のFLコスト管理方法を、現在のシステム環境に合わせてご提案します。

多店舗のFLコスト管理に関するよくある質問

FLコストと原価は同じですか?

同じではありません。飲食店で「原価」と言う場合は食材原価などのFコストを指すことが多い一方、会計上の原価は文脈によって意味が異なります。FLコストは、Fコストに人件費であるLコストを加えた金額です。

FLコストには交通費や社会保険料も含めますか?

管理目的によって異なります。店舗運営の速報では、労働時間と時給をもとにした概算人件費を使い、月次損益では交通費や法定福利費を含めた総人件費を使う方法があります。どの項目を含めるかを社内で統一することが重要です。

仕入額をそのままFコストとして使えますか?

速報値として使用できます。ただし、仕入れた食材がすべて当日に使用されるとは限らないため、確定値では棚卸を反映した実原価と差が出る場合があります。

ヘルプ勤務の人件費はどの店舗に計上しますか?

店舗別の実態を把握する場合は、実際に勤務したヘルプ先の店舗へ計上する方法が適しています。所属店舗に計上したままでは、店舗ごとのLコストを正しく比較できないことがあります。

多店舗ではFLコストをどのように比較しますか?

店舗規模が異なる場合は、FLコストの金額だけでなく、売上高に占めるFL比率、予算差、前年差、労働時間、客数などを組み合わせて比較します。業態や営業時間が近い店舗を同じグループに分けると、改善点を見つけやすくなります。

店舗数が増えたらExcel管理では難しいですか?

Excelでも管理は可能ですが、店舗数や連携データが増えるほど、転記、ファイル回収、店舗コードの統一、修正履歴の管理が複雑になります。手作業の負担や集計遅延が大きくなった段階で、POS、勤怠、仕入などのデータ連携と一元管理を検討する方法があります。

FLコストが月中と月末で変わるのはなぜですか?

月中は納品額や打刻実績を使った速報値、月末は棚卸、請求書、勤怠修正、給与計算を反映した確定値を使うためです。数字を見る際は、予定・速報・確定のどの段階かを確認しましょう。

まとめ

FLコストとは、飲食店の食材費であるFood Costと、人件費であるLabor Costを合計した金額です。多店舗展開では、店舗別のコストを同じ条件で比較し、本部・エリアマネージャー・店長が改善につなげるための基礎データになります。

ただし、FLコストを正しく管理するには、単に食材費と人件費を足すだけでは不十分です。仕入額と実原価の違い、人件費に含める項目、ヘルプ勤務の配賦、営業日の区切りなど、集計ルールを統一する必要があります。

また、営業計画に使う予定値、月中の判断に使う速報値、月次損益に使う確定値を分けて管理することで、数字の違いに振り回されにくくなります。

多店舗展開では、売上、勤怠、仕入のデータを店舗コードや日付で正しくつなぎ、同じ定義で確認できる仕組みが欠かせません。
FLコスト管理の第一歩は、目標値を決めることだけではなく、自社の数字がどのデータとルールから作られているかを明確にすることです。

まかせてネットでは、売上・勤怠・仕入などのデータを一元管理し、多店舗のFLコストを店舗別・日別・月別に確認しやすい環境づくりを支援します。

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