飲食店のFLコスト改善策|店舗別KPI管理で人時売上高を向上させる考え方
この記事の要約
飲食店の利益は、売上だけでなくFL(食材費=原価率+人件費=人件費率)のコントロールで大きく変わります。
本記事では、FLコスト・FL比率の計算方法、業態によって変わる目安の考え方、そして人時売上高を使ったシフト(人員配置)の見直しポイントを整理しました。
さらに、FLが悪くないのに利益が残りにくい場合に備えて、固定費(家賃)も含めたFLRの見方にも触れています。
まずは「同じ定義で数値を出す → 原因をF(原価率)とL(人件費率)に分ける → 日次で見える化して改善する」という流れで進めると、店舗別KPI管理にもつなげやすくなります。
飲食店経営の課題を解決するFLコスト管理と人時売上高
「売上はあるのに、月末に思ったほど残っていない」──飲食店の現場ではよく起きる悩みです。もちろん集客や客単価アップも大切ですが、同じくらい大事なのが“出ていくお金”の流れを把握することです。
FLと人時売上高をセットで見ると、何が整理できるのか
そこで役に立つのが、飲食店のKPIとして定番の「FL」と「人時売上高」です。FL(Food+Labor)は、食材費と人件費という“利益を左右しやすい2大コスト”をまとめて見られる指標で、原価(食材費)側が重いのか、人件費側が重いのかを切り分けやすくなります。
人時売上高は、シフトや人員配置が売上の動きに合っているかを見やすい指標で、ピークとアイドルタイムのムダや、オペレーションの詰まりに気づきやすくなります。
- ✅ どの店舗が、原価(食材費)で苦しんでいるのか/人件費で苦しんでいるのかが見えやすくなる
- ✅ ピークとアイドルタイムで、どこにムダな人件費が出ているのかを整理しやすくなる
- ✅ 店舗ごとの定義がバラバラで比較できない状態を、店舗別KPI管理として整えやすくなる
この記事では、難しい理論よりも「現場で使いやすい見方」に寄せて、FLコスト/FL比率の基本、目標の置き方、改善の進め方、そして“店舗別KPI管理”として運用に落とすコツまで整理します。
飲食店の生命線「FLコスト」とは?基本を理解しよう
FLコストとは、Food(食材費)+Labor(人件費)の合計です。飲食店の損益では、売上の次にインパクトが大きくなりやすく、FLが数ポイント動くだけで利益率や手元資金の残り方が変わることもあります。
FLは「下げる」より「切り分けて整える」が近道
ここで押さえておきたいのは、FLを「下げること」だけが目的ではない点です。食材費と人件費はトレードオフになりやすく、どちらかを削りすぎると、提供スピードや品質が落ちて売上が落ちる→結果的に利益が改善しない、ということも起こります。
だからこそ、まずは“数字の定義”を揃えたうえで、どこに原因があるかを切り分けるところから始めると進めやすくなります。
店舗別KPI管理で重要な「定義の統一」
店舗別KPI管理をするなら、定義の統一が重要です。
食材費(F)は、原材料やドリンク原価だけでなく、調味料や包材などをどこまで含めるかを店舗間で揃えると比較が崩れにくくなります。
人件費(L)は、給与だけで見るか、手当・社会保険料・交通費・福利厚生費などを含めて総人件費として見るかで数値の意味が変わるので、ここもルール化しておくと安心です。
FL比率とFLRの違い(固定費まで含めて「残りやすさ」を見る)
FL比率は、売上に対して(食材費+人件費)が何%かを見る指標で、現場の努力(発注やシフト、オペ改善)で動かしやすいのが特徴です。
一方で、FL比率がそこまで悪くないのに「思ったほど残らない」場合は、家賃などの固定費が重いケースもあります。
そこでFLR(FL+Rent)で見ると、固定費まで含めた利益構造が整理しやすくなります。
店舗別で比較する場合は、Rに何を含めるか(家賃、共益費、リース料など)を社内で統一しておくと判断がブレにくくなります。
補足:FLは変動費(食材費・人件費)の管理、FLRは固定費(家賃など)まで含めた利益構造の確認に向いています。粗利・営業利益・家賃比率も一緒に見ると、改善ポイントを絞り込みやすくなります。
FLコスト・FL比率の計算方法
計算式そのものは難しくありませんが、現場でズレやすいのは「売上の定義(値引・クーポン・キャンセルの扱い)」や「どの費用を含めるか」です。
まずは“同じルールで出す”ことを前提にして、基本の計算を押さえます。
基本の計算式(F/L/FL)
| 項目 | 計算式 |
|---|---|
| 食材費率(F比率/原価率) | 食材費 ÷ 売上高 × 100 |
| 人件費率(L比率) | 人件費 ÷ 売上高 × 100 |
| FL比率 | (食材費+人件費) ÷ 売上高 × 100 |
「何が分かるか」と「ズレやすい点」を押さえる
| 指標 | 何が分かるか | よくあるズレ(要注意) |
|---|---|---|
| 食材費率(F比率) | 原価(食材費)が重いかどうか | 包材・調味料を含める/含めない、棚卸精度、廃棄ロスの扱い |
| 人件費率(L比率) | 人件費が重いかどうか | 給与のみ/総人件費(社保・手当等)でブレやすい |
| FL比率 | 変動費(食材費+人件費)の全体バランス | 売上の定義(値引・クーポン・キャンセル)で比較が崩れやすい |
| FLR比率 | 固定費(家賃等)まで含めた残りやすさ | Rentに何を含めるか(家賃・共益費・リース等)を統一する |
数値例でイメージを掴む(店舗別KPI管理に使える形)
| 前提(例) | 数値 |
|---|---|
| 売上 | 300万円 |
| 食材費 | 105万円 |
| 人件費 | 90万円 |
| 家賃等(固定費の例) | 30万円 |
| 結果 | 算出 |
|---|---|
| FLコスト | 105万円+90万円=195万円 |
| F比率(食材費率/原価率) | 105万円 ÷ 300万円 × 100=35% |
| L比率(人件費率) | 90万円 ÷ 300万円 × 100=30% |
| FL比率 | 195万円 ÷ 300万円 × 100=65% |
| FLR比率 | (195万円+30万円) ÷ 300万円 × 100=75% |
なお、店舗別に比較するなら、売上(値引・クーポン・キャンセルの扱い)、食材費(包材・調味料を含めるか)、人件費(給与のみか総人件費か)などの定義を先に揃えておくと、「数字は合っているのに議論が噛み合わない」を避けられます。
FL比率の適正目安は60%以下|業態別の目標値
「飲食店のFL比率は60%以下が目安」と言われることがありますが、実際は業態・客単価・回転率・営業時間・提供スタイル(フルサービス/セルフ)で適正レンジが変わります。
大切なのは、目安をそのまま当てはめるより“自店に合う目標”として置くことです。
目標設定の考え方(ブレにくい順番)
| 目的 | 見る指標 | 見方 | 先に打つ手 |
|---|---|---|---|
| 原価を整える | 原価率(食材費率) | ロス・仕入単価・歩留まり | 発注精度/在庫/廃棄 |
| 人件費を整える | 人件費率(L比率) | 時間帯別の過不足 | シフト最適化/役割分担 |
| 残りを増やす | 営業利益/利益率 | FLR・家賃比率も含める | 固定費の見直し/売上構造 |
業態ごとの“傾向”を知っておく(例)
業態によって傾向が変わります。例えば、カフェは滞在やサービス要素でL比率が高めになりやすく、居酒屋は品数・仕込み・ピーク対応でFもLも上がりやすい傾向があります。
焼肉は歩留まり・ロス・単価変動がFに効きやすく、ラーメンは回転とオペ設計(提供スピード)が利益に直結しやすい傾向があります。
数値(例:60%)を断定して置く場合は、社内の実績や過去推移など“根拠の一文”を添えると、運用もしやすくなります。
なぜFLコストの管理が利益に直結するのか?
FLコストが利益に直結しやすいのは、食材費と人件費が飲食店の支出の中でも大きな割合を占めやすいからです。
売上が増えても、原価や人件費が同じように増えてしまうと、利益率は思ったほど改善しません。
「数ポイントの改善」が利益を安定させる理由
逆に、FL比率が数ポイント整うだけで、売上を大きく変えなくても利益が安定することがあります。
特に、原材料費の高騰や人手不足でコストが上がりやすい局面では、FLのブレを小さくできるだけでも経営はラクになります。
ありがちな“つまずき”と、切り分けのコツ
よくあるつまずきは、月次でしか見ないため気づいた時には赤字要因が積み上がっていること、店舗ごとに計算ルールが違って比較しても打ち手が決められないこと、原価(F)だけ削って品質が落ち売上が落ちること、人件費(L)だけ削って回らず回転や提供が落ちること、などです。
改善を“気合”ではなく“コントロール”にするコツは、FLをひとまとめに眺めるのではなく、F(原価率)とL(人件費率)に分けて原因を当てることです。
原価率(F)が上がるときに当たりやすい論点
発注精度・在庫・廃棄ロス・仕入単価の変動などが影響していることが多く、まず「どこでロスが出たか」を見える化すると手を打ちやすくなります。
人件費率(L)が上がるときに当たりやすい論点
ピークとアイドルタイムの配置、段取り、作業の標準化(オペレーション)が論点になります。時間帯別に人時売上高も合わせて見ると改善の当たりがつけやすいです。
生産性向上の鍵「人時売上高」とは?
人件費を見直す話になると「人を減らす」方向に寄りがちですが、減らしすぎると提供が詰まって回転が落ちる、クレームが増える、離職につながる…など別の損失が出ることもあります。
「削る」だけではなく、“回る配置”を作る指標
そこで便利なのが「人時売上高」です。人時売上高は、従業員1人が1時間でどれだけ売上を作れているかを見る指標で、シフトの妥当性や現場の詰まりを発見しやすくなります。
ピークタイムに人手が足りているか、アイドルタイムに配置が厚くなっていないか、提供・会計・仕込み・導線などでオペレーションが詰まっていないか、新人比率が高い日やイベント日などで生産性が落ちていないか、といった論点を整理しやすくなります。
人時売上高の計算方法と重要性
計算は簡単。ただし「定義を揃える」と比較が効く
人時売上高は、式だけを見るとシンプルです。ただ、現場で“数字の意味”がブレないようにするには、売上と労働時間の集計ルールを先に揃えておくと安心です。
たとえば売上は値引・クーポン・キャンセルの扱いで変わりますし、労働時間も休憩控除、残業、研修時間を入れるかどうかで総労働時間が変わります。
店舗別KPI管理で比較するなら、まずは「同じ定義で計算する」だけで、シフト(人員配置)の良し悪しが見えやすくなります。
計算式は「人時売上高=売上 ÷ 総労働時間」です。例えば、1日の売上が20万円で総労働時間が40時間なら、人時売上高は「20万円 ÷ 40時間=5,000円」となります。
ここで大事なのは、月次の平均だけで見るよりも、できれば「日」や「時間帯」でブレを見ることです。
アイドルタイムだけ極端に下がっているなら、改善は“その時間帯の配置”から始める方が早いことが多いです。
運用でズレやすいポイント(社内ルール化しておくと安心)
- ✅ 売上:値引・クーポン・キャンセルをどう扱うか(純売上で揃えるか等)
- ✅ 労働時間:休憩控除、残業、研修時間を入れるか(総労働時間の基準を統一)
- ✅ 費用:食材費に包材・調味料を含めるか、人件費は給与のみか総人件費か(原価率/人件費率の前提)
目指すべき人時売上高の目安は5,000円
人時売上高は「5,000円」を目安として語られることが多い指標です。ただし、業態や時給水準、営業時間の作り方、提供スタイルで適正は変わるので、ここは“基準点”として置き、店舗の実態に合わせて調整していく方が運用しやすいです。
下回るとき/高すぎるときの見立て
目安を大きく下回る場合は、いきなり人数を減らすよりも、まず(1)アイドルタイムの配置が厚くなっていないか(時間帯別で確認)、(2)提供・会計・仕込みで詰まりが起きて回転が落ちていないか、(3)客数・客単価の動きに対して配置が合っているか、という順に原因を当たると見つけやすくなります。
逆に高すぎる場合は、現場が無理して回しているサインのこともあるので、数字だけでなく品質や負担の状態も合わせて見ると安心です。
人時売上高から見える店舗の課題
人時売上高は、店舗の課題を“切り分ける”のに向いています。店舗別に並べるだけでも差が見えますが、時間帯別に見ると改善点が具体的になりやすいです。
低いとき/高すぎるときの論点
人時売上高が低いときは、人が余っている(待機が多い/役割が曖昧)状態になっていないか、段取りが悪く同じ時間で捌ける客数が少なくなっていないか、そもそも客数が少ない・回転率が低い・売上導線が弱い、といった論点が考えられます。
逆に高すぎるときは、人手不足で負担が大きい(離職や品質低下のリスク)ことや、ピークに間に合っていない(提供遅れで機会損失)可能性もあるので、客単価・回転率・提供時間など他のKPIとセットで見ながら「売上不足なのか」「捌き不足なのか」を分けていくと判断しやすくなります。
飲食店のFLコスト改善は「やり方」より「毎日の見方」
FLコストや人時売上高は、特別なテクニックよりも“見る頻度”で差がつきやすい指標です。
月次でまとめて見るだけだと「振り返り」で終わりがちですが、日次(難しければ週次)でブレを拾えると、赤字要因が大きくなる前に手を打ちやすくなります。
店長が日々見やすいチェック(3分でOK)
- ✅ 人時売上高:どの時間帯で下がったか(ピーク前後/アイドルタイムでブレを確認)
- ✅ 人員配置:売上の動きに対して、人数・ポジションは合っていたか(厚すぎ/薄すぎがないか)
- ✅ FLの変化:原価(F)側か人件費(L)側か(明日変えるのは「配置」か「発注」かを決める)
まかロボ君
KPIは「本部に報告する数字」ではなく「店舗の判断をラクにする道具」
店舗で同じKPIを日次で見る習慣がつくと、改善は“気合”ではなく“仕組み”になります。店長の判断や店舗運営が少しずつ整い、結果としてFLコスト改善のスピードも上がっていきます。
とはいえ、多店舗でこの運用を回すには、「何を毎日見ればいいか」「本部と店舗でどう揃えるか」「成功しているチェーンはどう進めているか」といった整理が欠かせません。
そこで、FLコスト改善と日次KPI運用の進め方を、事例とあわせてまとめた資料をご用意しています。このまま続けてご覧ください。
日次でFLコストや人時売上高を“自動で見える化”するには、売上・勤怠・仕入(発注)のデータがつながっている状態が前提になります。
関連機能:売上管理/勤怠管理/仕入・発注管理
用語補足:この記事で出てきたKPI
- ✅ FLコスト:食材費(Food)と人件費(Labor)の合計。店舗の利益構造を把握するための基本指標。
- ✅ FL比率:(食材費+人件費) ÷ 売上 × 100。店舗の利益体質を把握するのに使う。
- ✅ FLR:FL(食材費+人件費)に家賃など固定費(Rent)を加えて、残りやすさを確認する考え方。
- ✅ 人時売上高:売上 ÷ 総労働時間。店舗の生産性やシフトの妥当性を確認しやすい。
- ✅ 予実管理:予算(計画)と実績の差を把握し、店舗の軌道修正につなげる管理手法。
- ✅ 店舗別KPI管理:店舗単位で同じ基準のKPIを比較できる状態。多店舗では改善の起点になる。

