【Vol.17】利益目標から必要売上を逆算できると何が変わる?予算作成と出店判断をラクにする考え方
飲食チェーンの数値管理では、損益分岐を把握することが重要です。「いくら売れば赤字を回避できるのか」が見えるだけでも、現場の判断はしやすくなります。

一方で、予算作成や出店判断の場面では、それだけでは足りないことがあります。実際に知りたいのは、「どのくらい利益を残したいか」「そのために必要な売上はいくらか」という視点だからです。
売上や客数を少しずつ変えながら、利益がどこまで残るかを何度も試算している担当者も少なくありません。本記事では、利益目標から必要売上を逆算する考え方が、予算作成や新規出店の検討でどのように役立つのかを整理します。
- 課題:損益分岐は見えていても、目標利益に対する必要売上は何度も試算しがち
- 考え方:固定費・原価率・人件費率などをもとに、利益目標から必要売上を逆算する
- メリット:予算作成が進めやすくなり、新規出店時の収支シミュレーションにも活かしやすい
なぜ損益分岐だけでは予算作成が大変なのか

損益分岐は、赤字と黒字の境目を把握するうえで欠かせない考え方です。どの店舗がどの水準の売上で採算に乗るのかを見える化できれば、店長や本部にとって大きな判断材料になります。
ただ、予算を作る場面では、赤字を回避するラインを見るだけでは足りません。実際には、「今期はこれだけ利益を残したい」「この店舗ではこのくらいの利益を確保したい」といった目標から計画を組み立てることが多いためです。
そのため現場では、売上を少し変えてみる、客数を動かしてみる、人件費率を見直してみる、といった試算を何度も繰り返しながら、最終的な利益着地を確認することになります。この行き来が増えるほど、予算作成には手間がかかりやすくなります。
- ・売上を少し変えて、利益がどこまで残るか確認する
- ・客数や客単価を動かして、必要売上を見直す
- ・原価率や人件費率の前提を変えて、複数パターンを試す
つまり、多くの担当者が日々行っているのは、損益分岐の確認そのものより、その先の利益シミュレーションだといえます。
利益目標から必要売上を逆算する考え方とは

こうした手間を減らす考え方のひとつが、利益目標を先に置き、必要売上を逆算することです。
たとえば、固定費、原価率、アルバイト人件費率、その他経費などを前提として持っておけば、「このくらい利益を残したいなら、月商はいくら必要か」を先に見積もりやすくなります。
必要売上が見えれば、そこから日次売上目標、客単価を踏まえた必要客数、人件費率を踏まえた人時の目安など、現場の行動計画にも落とし込みやすくなります。売上を入れて利益を見るのではなく、利益から売上計画を組み立てる発想です。
月間でどのくらい利益を残したいかを先に置く
固定費や変動費率をもとに必要月商を逆算する
日次売上・客数・人時の目安に落とし込みやすい
予算作成で便利な理由

この考え方は、特に予算作成時に相性があります。月次予算を立てるとき、本部やSVは売上予測だけでなく、利益をどこまで確保できるかも見ながら数字を組み立てています。
その際、利益目標から必要売上をすぐ試算できれば、売上を何パターンも入れ替えて確認する手間を減らしやすくなります。利益を起点に考えることで、予算のスタート地点が明確になり、数字の筋道も見えやすくなるためです。
また、店舗ごとに家賃や固定人件費、売上構成が異なる場合でも、前提条件を登録しておけば、各店舗に応じた予算の考え方をそろえやすくなります。単に前年対比で作るのではなく、利益を残すために必要な売上を起点に考えられる点が大きなメリットです。
- ・利益目標から必要売上を素早く試算しやすい
- ・複数パターンを比較しながら検討しやすい
- ・売上だけでなく、客数や人時の計画まで落とし込みやすい
- ・複数店舗の予算を同じ考え方で比較しやすい
新規出店の判断でも使いやすい理由

利益からの逆算は、新規出店時の検討にも向いています。新店では、家賃、営業時間、人員配置、客単価、原価率など、複数の条件をもとに収支を見積もる必要があります。
このとき、損益分岐だけを見ていると、「赤字にはならなさそう」という判断にとどまりやすくなります。一方で、「この立地、この固定費、この運営条件で、目標利益を確保するには月商がどのくらい必要か」まで見られると、出店判断の精度が上がります。
さらに、出店後の初期予算づくりにもつなげやすく、開店前の事業計画と開店後の予算運用を一続きで考えやすくなります。出店時の判断材料としても、既存店の予算作成の延長としても使いやすい考え方です。
- 家賃や固定費を踏まえて、必要月商がどのくらいか
- 想定客単価から見て、必要客数が現実的か
- 目標利益を確保できる運営条件になっているか
損益分岐の考え方とどうつながるか
この考え方は、損益分岐と対立するものではありません。むしろ、損益分岐の考え方を土台にして、その先の計画づくりに広げるものです。
まずは、
【Vol.11】店長を数字に強くする方法|店舗別「損益分岐」の見える化
でご紹介したように、店舗ごとの採算ラインを把握することが出発点になります。
そのうえで次の段階として、「赤字を避けるにはいくら必要か」から、「目標利益を達成するにはいくら必要か」へ視点を広げることで、予算作成や出店判断に活かしやすくなります。
赤字を避けるために必要な売上を把握する
目標利益に必要な売上を起点に計画を組み立てる
予算作成、出店判断、収支計画に広げやすい
損益分岐は判断の土台であり、利益からの逆算は計画づくりを前に進めるための考え方だといえます。
まとめ:利益から逆算できると計画が立てやすくなる
飲食チェーンの予算作成や出店判断では、損益分岐の把握だけでなく、利益目標から必要売上を逆算できることに実務的な価値があります。
売上や客数を少しずつ変えながら利益を確認する作業は、多くの担当者が日常的に行っているものです。そのため、利益を起点に必要売上を見積もれるだけでも、計画づくりの手間は減らしやすくなります。
大切なのは、数字を確認するだけでなく、「どの利益を目指し、そのために何を前提に、どれだけ売る必要があるのか」を整理しやすくすることです。損益分岐の見える化に加えて、利益から逆算する考え方を取り入れることで、予算作成も新規出店の判断も、より具体的に進めやすくなるでしょう。
関連テーマとして、次の記事もぜひご覧ください。
【Vol.11】店長を数字に強くする方法|店舗別「損益分岐」の見える化
